10年目の3.11に学校が向き合うべきこと
理事長 鬼沢 真之
10年前の3月11日、自由の森学園は中学卒業式を翌日にひかえ、
その準備などの活動にたくさんの生徒が登校していました。
経験したことのない大きな揺れに襲われ、登校していた
生徒全員がグランドに避難しました。グランドまで歩くなか、
東北地方は震度7、大津波警報が出されているという情報も
伝わってきました。
学園の生徒は無事でしたが、実家が被災したり、
親戚が亡くなったりする生徒もいました。
津波に襲われた学校、命を失った子どもたち、原発事故によって
移転したり、バラバラに避難せざるを得なかった子どもたちの
ことは、同じ教育に携わるものとして忘れてはならないこと
と思います。

改めて、この日に、学園が大災害や原発事故を経て
どのような取り組みをしているかについてお伝えしたいと思います。
ひとつは、災害から生徒の命と安全をどう守るかという課題です。
(1) 学園の建物は全て耐震基準を満たしております。
体育館の天井も落下防止の工事を完了しております。
また、校内の設備などについても安全点検を行っており、
問題点があれば早急に対応しております。
(2) 緊急地震速報を校内非常放送に連動させました。
スマホを持っていなくても、校内全域で速報が流れるシステム
になっております。
(3) 10年前の3月11日は、通常授業ではなかったため、学園にいた
生徒は限られていましたが交通機関はマヒし、帰宅できない生徒が
多数出ました。
学園は可能な限り帰宅できるよう、主要ターミナルに向けて
スクールバスを出しましたが、結果としては極度の渋滞に巻き込まれ、
到着が深夜になったり、ある便は学園に引き返すことになりました。
この反省から、学園は、安全に帰宅できる手段のない生徒は、
原則学園に留めることを基本とすることにしました。
保護者の方も、くれぐれも迎えに来ることのないよう
お願いいたします。
(4) 当時、学園に泊まることになった生徒たちに対して、
食堂は温かいカレーを提供し、寮生は寝具を提供してくれました。
学園は、今後予想される災害を想定し、水と食料、毛布の備蓄
について準備を進めております。
(5) 今年1月に寮に導入したバイオマスボイラーを停電時でも
稼働させるために、発電機を2基導入しました。
発電機の燃料にはプロパンガスが使えますので、寮の給湯、暖房、
校舎の貯水タンクへの給水、食堂設備の運転に使うことができます。
また、今後防災用のソーラーシステムも導入を検討し、
サーバーの維持や生徒のスマホの充電に活用する予定です。

ふたつ目は、エネルギーに関する問題です。
深刻な原発事故の問題は単に電力会社や政府だけのものではありません。
一度事故を引き起こせば、多数の住民を危険にさらし、
広大な地域が居住不能となる危険のあるエネルギーに依存していた
自分たちの問題を考え、それまでとは違うエネルギー消費の行動
をとることが必要と考えました。
原発事故の問題だけではなく、気候変動の危機が叫ばれるなか、
未来に生きる子どもたちの学ぶ場は、持続可能な社会を見すえたもの
でなければならないと考えます。
学園は、使用する電力を2014年から再生可能エネルギーを中心とした
電力に切り替え、現在は再生可能エネルギー100%(RE100)電力を
購入しております。
みんな電力(株)の協力で、現在学園が消費している電力は、
誰がどこでつくったエネルギーか分かるシステムになっております。
並行して電力消費量の「見える化」を進めており、電力の節約についても
努力しているところです。
三つ目は、被災地支援と防災を学びのテーマとすることです。
震災後には、教職員が個々に被災地に出かけ支援しただけでなく、
この10年の間、高校のいくつかの選択講座で宮城県石巻市、
岩手県釜石市、福島県二本松市東和地域などへのボランティア活動を
軸としたスタディーツアーを行ってきました。
また、福島県の子どもたちを受け入れて高校生たちと屋外で遊ぶ
キッズウィークエンドという取り組みも、アースデイ東京の活動と
並行して毎年行ってきました。
今後も、継続的に被災地と関わり学ぶことは重要な総合学習のテーマ
となるものと考え、積極的に取り組んでいくべき課題と考えます。
以上のことは2017年に加盟登録したユネスコスクールに求められる
課題に合致するものでもあります。
持続可能な社会を構想する学びと防災教育を総合的に構想し、
学園づくりをさらに進めていきたいと考えています。
皆さまのご理解とご支援をお願いいたします。
自由の森学園理事長 鬼沢 真之 (自由の森学園公式HPより)